黒執事2のシリーズ構成

シリーズ構成について ― みにまる雑記帳

 この前、三幕構成によるシリーズ構成の話題を書きましたが、比較的最近見たアニメの中では『黒執事』2期の脚本・シリーズ構成が巧かった印象です。『まどか☆マギカ』のようにわかりやすく三幕構成になっているわけではないのですが、1期をうまく引き継ぎつつ綺麗にまとめていましたね。ちなみにシリーズ構成を担当していたのは、今期も注目作を手掛けている脚本家の岡田麿里

◆1期とのつながり

 1期も見ていましたが、悪魔が契約に基づいて主人公の魂を喰らうのがラストシーンという、どう見ても続きがあるとは思えない潔い終わり方だったので、あそこからどうやって2期につながるのか疑問でした。
 2期では、最初のうちは1期とのつながりが明らかではなく、1話では新しい主人アロイスと黒執事クロードが登場して主役交代を匂わせておいてから、1期の主役であるシエルとセバスチャンが登場して主役は変わらないことが明らかになります。

 その後もすぐには1期とのつながりがはっきりせず、1期から直接つながった話なのか、パラレルな世界観にして1期の結末は無かったことにしたのか、はっきりしない話の進め方でした。2話は1話のエピソードと関係ないシエルの使用人たちとフィアンセのエリザベスをフィーチャーしたエピソードを展開し、3話では死神グレル、4話では1期で死んだアバーライン警部補の双子の兄、5話ではインド出身のソーマとアグニ、他にも葬儀屋や華僑のラウなど、1期に登場した主要キャラクターを登場させています。ファンサービスとか1期のバラエティに富んだ雰囲気を引き継ぐとか理由は色々考えられますが、そうしたゲストキャラを活用した1話完結のエピソードをやりながら、2期の本筋に絡む新キャラであるアロイスとクロードの存在を小出しに出しています。

 5話の会話や描写で、2期は1期の後につながる話であることが明らかになり、6話でようやく真相が明らかになります。真相はわりと強引な、少年マンガによくある「実はあの時〜」と、死んだキャラが後から死んでいなかったことにされるような御都合主義の展開なんですが、あの1期のラストから話をつなげようとすればどうやっても強引になるのは仕方ないでしょう。


 この1期と2期を力技でつなぐ部分が時系列通りにいきなり最初にくると、どうしても強引な印象が強くなると思うんですよね。ワンクッション入れることでそうした強引な印象を回避しつつ、逆につながりをぼやかすことでうまく視聴者の興味をひいているのは上手いかわし方ですね。さらに真相が明らかになる6話では、既に全12話のうち半分が過ぎてアロイスにまつわるメインストーリーも動き出しているので、そのまま後半に誘導しやすくなっています。


 「完結するように終わった1期からどうやって話をつなげるか」という難題を逆に活かして成功しているのではないでしょうか。

◆キャラクターの関係性

 また、前半はシエル&セバスチャンとアロイス&クロードの2組の主従の対決の構図を持ち出しておいて、クロードがアロイスに愛想を尽かす中盤からは、シエルの魂を巡るセバスチャンとクロードの対決と、クロードに振り向いて欲しいアロイスとクロードに欲されているシエルの対決、という捻れた構図に変化し、終盤の10話からそれまで脇役だったもう一人の悪魔、ハンナがここに加わって話が複雑になります。つまり1期とのつながりで引っ張る前半はシンプルな対立の構図で、真相が明らかになって本筋の話が大きく動く後半は、より入り乱れた構図になっていますね。
 6話でセバスチャンとクロードが取引したところから関係に変化が起きているので、こちらもやはり6話がターニングポイントと言えます。

◆まとめ

 こうして見ると、明確な線引きはしにくいものの、1期の状況をうまく引き継ぐ為の前半、真相が明らかになり状況が変化する中盤、本筋の話で締めにかかる後半、とある程度は役割分担してまとめているように思います。


 また、全体の構成とは別の話ですが、最後のオチが人によってハッピーエンドともバッドエンドとも取れる、因果応報を思わせる結末で、なおかつあの結末で3期は無いだろうという終わり方でした。ファンの方には賛否の分かれそうなすっきりしないエンディングでしたが、完結したかに見えた1期を力技で2期につないでみせ、さらに徹底したやり方で再び締めくくってみせた、という点でよく出来た脚本だと思います。